Celso Sim と Arthur Nestrovski とのダブルクレジットで、voz e violãoという副題が付いている通り、「声とギター」だけの素晴らしいデュオ作品です。シンの力みの全くない柔らか且つ伸びやかな歌声がものすごく魅力的です。それを支えるネストロフスキのギターが歌以上に表情豊かで引き込まれます。全16曲中、ネストロフスキの作品が7曲あるせいもありますが、アルバム全体を完全にコントロールしています。おもしろいのは残る9曲の選曲、ルピシニオ・ホドリゲス、ドリヴァル・カイミ、カルトーラ、イスマエル・シルヴァ、カエターノ・ヴェローゾとブラジルの御大の曲に混じってシューマン、シューベルトとドイツロマン派の歌曲をネストロフスキのポル語訳詞で収録しています。選曲だけ見ると??となりそうですが、聴けば全く違和感がない、それどころかしっかり世界を作り上げているのが納得できると思います。Latinaの解説によるとネストロフスキはクラシックギター奏者、兼サンパウロ州立オーケストラのアーティスト・ディレクターとのこと。広い見識で選曲するだけでなく、ギター一本で独自の世界を作ってしまうアレンジとテクニックに脱帽です。その上、シンとネストロフスキはまるで1人であるかのようにぴったりと息が合っています。歌とギターのお手本となる、名盤です!