Quique Sinesi

アルゼンチンのギター奏者、作曲家として今やコンテンポラリー・フォルクローレの世界で欠かすことのできないQUIQUE SINESIの音楽を紹介します。 Carlos Aguirre Grupoでも素晴らしいギターを聞かせてくれていますし、コンテンポラリー・フォルクローレが好きな方ならキケ・シネシの名前を知らなくてもきっとギターの音にはなじみがあるかもしれません。

sólo el río (2006)

最近私のライヴでもキケ・シネシの音楽を紹介していますが、そのきっかけとなったアルバムがこれ。 Quique Sinesi-Moguilevsky「sólo el río 」(2006) マルセロ・モギレフスキー(reeds)とのダブルクレジットになっています。「sólo el río」(河ばかり)とタイトルされたアルバムには「Música del Río de la Plata」(ラ・プラタ河の音楽)と副題がつけられています。12曲中8曲がシネシの曲、4曲がモギレフスキーで、デュオでの2作目だそうです。シネシは7弦ギターとピッコロギターを使い分け、モギレフスキーはクラリネット、バスクラリネット、ソプラノサックス、ハーモニカ、リコーダー、私は名前を知らない特徴的な音色のリード楽器、そしてある曲では歌まで歌っています!アルバムを通して聞くと2人とは思えないほど多彩な音作りで、ラ・プラタ河流域の自然と音楽を表現しています。それもめちゃくちゃ凄腕テクニックでさらりとやってます。2拍子とも3拍子ともつかないゆったりしたフォルクローレのリズムに絶妙なスピード感で2人の音が絡んでいきます。シネシの曲はどれも比較的短めの美しいメロディーが骨格になっていて(時にはパーカッシブな奏法も効果的に使いながら)つい口ずさみたくなります。1曲目のLa magia está dentro tuyo(あなたの中に持っている魔法)、3曲目のEl Rio(河)などホントに素晴らしい!

cuchichiando~Leguizamón x Sinesi~(2009)

シネシ単独クレジットの新しい作品です。シネシが曲によって様々な豪華ゲストを交えてソングライターのグスタボ・(クチ・)レギサモンの作品で素晴らしい音楽世界を作り上げています。ゲストにはギレフスキー(笛)のほか、以前このコーナーで紹介したPuente Celesteの素晴らしいパーカッション奏者サンティアゴ・バスケス、コンテンポラリー・フォルクローレ界の大御所ファン・ファルーも参加しています。一部を除きほとんどの曲でゲストとのデュオというシンプルな編成で濃密で多彩な音楽が紡がれています。これを操っているのがニコラス・ファルコフ。彼のアルバムの色彩感も特筆すべきものがありますが、私のイメージですが「大地/土」という言葉がぴったり来ます。そこへシネシの音楽が始まると「風、緑、水」が重なってきてさらに色彩感がアップするのです。レギサモンの作品はまさにラ・プラタ河流域の心を紡ぐにふさわしい、シンプルで美しいメロディ、多様なフォルクローレのリズムに溢れています。ルイス・サリナス(g)の2009年のライヴDVDでアンコールで歌っていた(歌も上手い!)El Silbadorが素敵でいつかやりたいと思っていましたが、このcuchichiandoでも9曲目に7弦ギターとクラリネットのデュオで聞くことができます。改めて良い曲だと思いました。 

Danza Sin Fin (1998)

こちらは待ちに待った再発売のアルバムです。しかも日本語解説付きです。 欲しくてもどこのサイトでも在庫切れとか入手困難となっていて、そうなるとさらに欲しくなるものです。と、最近ここでもよく紹介するEL ARRULLOからのニュースメールで、2011/5/29国内盤発売なるニュースが目に入り、即刻予約し入手しました。Danza Sin FinとはEndless Dance、終わりなき踊り、という意味だそうです。全12曲、5曲でゲストとして、カルロス・アギーレp、ファン・ファルーg、グスタボ・パグリアbandoneonが加わっています。いずれもゲストとの繊細なデュオ・アンサンブルが素晴らしいです。アギーレとシネシの音の会話の自然なことこの上ない。ファルーやパグリアとのデュオではフォルクローレの魅力があふれ出ています。他の7曲ではシネシのみの演奏ですが、7弦ギター、ピッコロギター、チャランゴ、スチール弦ギターを使い分け、曲によっては1人で多重録音してシネシのギターミュージックの世界を広げています。どの曲も魅力溢れる出来映えですが、先にも紹介したLa magia está dentro tuyoのソロギターバージョンが素晴らしいです。またソロチャランゴによるAndando(さあ行くぞ)が印象的です。こういう良質なアルゼンチンのコンテンポラリーフォルクローレの作品をクラシック奏者のレパートリーとして広く認識させ、定着させたのが、日本語解説でも触れているビジャダンゴスgによる録音と言えます。アルバムと合わせて「アルゼンチン・ギター作品集」を出版したのが大きいです。魅力的な数々の曲ですが、多分に作曲者=演奏者の感性に因るところが大きく、演奏者の立場では敷居が高かったのですが、譜面になったことで多くのギタリストが取り組みやすくなったのではないでしょうか。解説書では1998年出版とありますが、1995年の間違いです。当時、この手の譜面は皆無に等しく、私も飛びつきました。 さて次は、Danza Sin Finと同時期の録音でシネシの朋友、モギレフスキーとの作品です。

soltando amarras (1998)

Quique Sinesi-Marcelo Moguilevskyのダブルクレジットになります。amarraとは船の碇や馬の綱のように縛り付けるもの、それを緩めるので、soltando amarrasで「解き放て」「碇を上げよ」といった感じでしょうか。シネシは7弦ギターとピッコロギター、モギレフスキーは各種リコーダー、クラリネット、ソプラノサックスと相変わらずの多才ぶりで、全曲デュオなのに色彩豊かです。素晴らしく息のあった演奏で、何処まで譜面になっているのか分かりませんがおそらくかなりアドリブ的なアプローチが大部分を占めているように感じます。とにかくテーマの提示から、変奏(アドリブ)とかっちりしていると言うより連続的に発展していくようで、とても自由な印象です。シネシのギターの音色、リズムワークも素晴らしいですが、モギレフスキーの自在に疾走するフレーズがきわだっています。5曲目にアルバム中、一曲だけアギーレpが参加してトリオでモギレフスキーの曲Largo Horizonteを演奏しています。これは広がりのある分散和音と細かいフレーズからなるメロディーの対比が美しい。北欧ジャズの世界が垣間見れます。ヨーロッパで評価が高いのも分かります。

CUENTOS DE UN PUEBLO ESCONDIDO (2005)

録音は2001年とのこと。シネシの7弦ギターとチャランゴ、スチール弦ギター、ピッコロギターによる独奏を堪能できます。本人のHPのディスコグラフィーにこのアルバムのデータが見当たらず、いったいどういう経緯でできたのか分かりません。これはAmazon MP3ダウンロードで安価に購入できます。MP3だからなのか元々の録音の仕方なのか分かりませんが、他のアルバムとは空気感が違います。遠近感に乏しいですが言い換えればライヴで目の前で弾いている感じがします。5曲目のContramareaを先に紹介したビジャダンゴスの演奏と比べてみると興味深いです。ビジャダンゴスの演奏は譜面にもなっていますが、それでも譜面通りでない「なまり」のようなフレーズやアドリブ的なアプローチも見えていたのですが、シネシの演奏を聴いて、7弦特有の響きのせいもありますが、その複雑さにびっくりしました。ビジャダンゴスは6弦用にアレンジしてさらに音や構成を整理してわかりやすくしていました。7曲目Dos Solesはアルバム「sólo el río」「soltando amarras」でもモギレフスキーとの演奏で聞くことができ、それも勿論素晴らしいのですが、7弦ギターバージョンはパーカッシブな奏法が前面に出ていて違った印象を与えます。なかなかいいです。11曲目El Abrazoではクラシック奏法に長けたシネシならではの広がりのあるアルペジオの中をトレモロが駆け抜けます。Abrazoとは抱擁と言う意味のほかに、締めの挨拶、たとえば、敬具とか愛を込めて・・とかの意味もあるようですが、この場合のEl Abrazoは「自然に抱かれて」といった捉え方で良いかもしれません。やはりプラタ河の流れや川辺の風を感ぜずにはいられません。13曲目「郷土」を意味するterruñoでは、広大な自然を感じさせる独特なアルペジオに親しみやすいメロディーが重なり、人の生活の営みを感じさせます。まさにアルバムのジャケットのままですね。ダウンロード版は(ジャケットはありませんが)入手が容易なので是非聞いて欲しいです。

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  (2017/05/09)

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